旅は、結婚に似ている。 コントロールできると思ったら大間違いだ
(ピーヒョロロロロロロ……ザー……ピッ……)
――こちら宇宙船・中京号。
地球の片隅、稲沢より発進。
我々は今、恒例行事という名の「儀式」を開始した。
名を、社員旅行という──
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家族よりも長く同じ場所にいて、
他人よりも深く距離を保ち、
気づけば、肩を並べて日々を航行している。
それが、会社という宇宙船だ。
だが、知っているようで──知らない。
笑い方。
食べ方。
眠り方。
そのどれ一つとして、じつは知らなかったりする。
だから、旅に出る。
仕事という鎧を脱ぎ、
肩書という仮面をはずし、
ただの人間として、となりに並ぶために。
目的地は、京都。
千年の都が、千年分のやさしさで、
僕たちを迎え入れてくれた。
夜がくる。
宴がはじまる。
いつも以上に、大げさに笑う。
いつも以上に、大げさにツッコむ。
それを「茶番だ」と冷笑する者もいるだろう。
「苦手だ」と距離を取る者もいるだろう。
いいさ、笑ってくれ。
それでも──
僕たちには、この時間が必要なのだ。
いつもより少し多めに酒をのみ、
ちょっとだけ心をほどき、
ほんの少しでも、互いをわかり合うために。
仕事の現場では語られないことが、
旅の夜には、こぼれるように語られる。
そうしてまた、来週からの仕事に──
ほんの少しだけ、余白が生まれる。
京都の街角で、ふと見上げた空は、
仕事の天井より、ずっと高くて広かった。
その下で、俺たちは今日も同じ船に乗っている。
名前は──中京号。
目的地は、まだ見ぬ未来。





